第11回「五感とサブモダリティ」
こんばんは、堀江真鯉男です。
このブログでは「声を良くする!テクニック」として、声楽家として自分が日頃気づいたこと、学んだことをまとめるために書き記しています。声の悩みを改善するサポートとして、何か皆さんのお役に立てたら嬉しいです。
今日は「センスの鍛え方」の続き、
「五感とサブモダリティ」
についてお話します。
先に結論を挙げておくと、
「五感の使い方が、発声や音楽のセンスをものすごくレベルアップしてくれる」
という話です。
「五感はわかる。でもサブモダリティってなに?」
確かに。
サブモダリティ?
少なくとも、声楽の世界では聞いたことがない単語です。
この五感とサブモダリティ。
一体、なんの役に立つのでしょうか?
五感と言語感覚
もし誰かに
「発声を良くするために大切なことはなに?」
と尋ねられたら、僕は迷わず
「呼吸と身体を整えることです」
と答えます。
特に身体の使い方に関しては具体的なトレーニングの方法や抽象的なイメージを伝える方法などがあって、僕が声楽家・ボイストレーナーとしてこれまでに学んできた方法で言うなら
「共鳴区を響かせる方法」
「7つの身体のケア方法」
「インナーマッスルの鍛え方」
「本番での成功率を120%に近づける方法」
などいろんなやり方があります。
だけど発声に役立つ身体の使い方は、
「筋肉の使い方」だけではありません。
身体の使い方を広い意味で言うなら、
「五感の使い方」
を学ぶことも、身体の使い方を学ぶことに等しいと思います。
五感について改めて取り上げておくと、
「視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚」
この5つの感覚器が五感と呼ばれています。
そこに言葉の感覚が合わさることで、人間は奥深いコミュニケーションを取る事が出来ます。
この五感と言葉によるコミュニケーションは共感や感動を生みだす一方で、すれちがいや押し付けを生み出すことも多々あります。
これは僕の体験談ですが、
高校生の時、僕は吹奏楽部に入っていました。ある時、普段あまり部活に来ていなかった女子と話す機会があり、話を聞いてみると「バイトが忙しくて部活に顔を出せない」と嘆いてたんですね。
そこで僕は労うつもりで
「そうかあ、頑張ってね」
と声をかけました。
さて皆さん、彼女はどんな反応だったと思いますか?彼女は怒った声で、こう応えました。
「もう頑張ってるよ!これ以上なにを頑張れって言うの!?」
いま思えば、僕が相手に掛けた「頑張ってね」は、すでに頑張っていた彼女を追い詰めてしまうような、配慮や気遣いに欠けた言葉だったなと思います。
一見「頑張ってね」は、ポジティブな言葉に思えます。しかし状況や背景によっては、相手を追い詰めたり否定してしまうネガティブな言葉にもなり得るということです。
言葉の受け取り方は、
相手がどのような人生経験をしているか?(過去)
今どのような状況にいるのか?(現在)
どこに向かおうとしているのか?(未来)
そうした背景によって変わります。
言葉というのは、受け取り手(相手や第三者)の現状位置によってポジティブにもネガティブにも変わります。また「五感の記憶」や「感情の記憶」を呼び起こすこともあります。
このように、言語によって心の反応や記憶への干渉が起こる感性を
「言語感覚」
と呼び、この言語感覚と五感を合わせた感覚の入出力チャネルを
「モーダルチャネル」
といいます。
細かなパラメーター設定
モーダルチャネルには
「視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚」
+言語感覚があります。
(実際には「筋感覚」のように他にもあるのですが、今回は割愛します)
そしてこうした感覚には、実際にはもっと細かな感覚があります。
例えば視覚で言うならば
「見る」
というアクションにはもっとこまかなパラメーター設定があって、
「色の濃淡を見る、凹凸を見る、明暗をみる、透過性を見る、高低差を見る、質感を見る、自然と不自然を見る、動きを見る、距離を見る」
など、本当はいろんなことを細かく見たり、細かく気づいたりしています。
聴覚で言うならば
「聞く」
というアクションにも
「音程の高低差を聞く、硬さ柔らかさの質感を聞く、人工的か自然かの性質を聞く、強弱を聞く、持続時間の長短を聞く、明るさ暗さを聞く、奥行の浅さ深さを聞く、鋭さ丸さを聞く、凹凸を聞く、流動性と不動性を聞く、若さと老齢さを聞く、鮮やかさと不鮮明さを聞く、声の状態から身体の状態を聞く、呼吸音の健康さ不健康さを聞く」
など、ものすごくこまかなパラメーター設定があります。
このように、モーダルチャネルの各感覚に割り振られた細かいパラメーター設定のことを
「サブモダリティ」
と言います。
サブモダリティと感覚の送受信
サブモダリティには、
受信と送信、入力と出力
に関する感覚があります。
「見る」や「聞く」というアクションは受信や入力の機能を持つ一方で、送信や出力の機能もあります。
これはどういう意味かと言うと、
例えば「歌を歌う」「絵を描く」「詩を書く」といった送信・出力をするためには、
「聴覚」「視覚」「言語感覚」の各チャンネルから内部表現(心のこと)に受信・入力されてきた莫大な量の経験と知識が必要だと言うことです。
実はこのサブモダリティこそが、
詩のセンス(言語感覚の送受信)
美術のセンス(視覚の送受信)
音楽のセンス(聴覚の送受信)
アロマのセンス(嗅覚の送受信)
料理のセンス(味覚の送受信)
運動のセンス(触覚や筋感覚の送受信)
などを生み出しています。
つまりセンスとは、
サブモダリティの
圧倒的に細かいパラメーター設定
のことを言います。
さて、残念ながら今日はここまでです!
また次回をお楽しみに𓆏