第15回「体得と置き換え、シナスタジア」
こんにちは、声楽家の堀江真鯉男です。
今日はみなさんに、
「シナスタジア(共感覚)は誰でも学べる」
というテーマでお話させて頂きます。
このシナスタジアという言葉、みなさんはどこかで聞いたことがあるでしょうか?
まずは言葉の説明と、定義付けからしていきたいと思います。
シナスタジア(共感覚)とは?
シナスタジアを一言で言うならば、
「モーダルチャネル(五感と言語)の感覚を入れ替える」
という能力のことです。
「モーダルチャネルの感覚を入れ替える?どういう意味だ?」
たしかに、よくわからないですよね?
シナスタジアについてもっと細かく考えるためには、以前のブログでお話した「サブモダリティ」について細かに観ていく必要があります。
五感と言葉、それと脳機能を繋ぐチャンネルのことを「モーダルチャネル」と呼び、モーダルチャネルの細かなパラメーター設定のことを「サブモダリティ」と呼びましたね。
このサブモダリティの細かなパラメーター設定を、視覚と聴覚を例に見て見ましょう。
視覚のサブモダリティ「○○を観る」
例:明るさと暗さ、形、サイズ感や規模、奥行きや凹凸、高低差や距離、色合いや鮮明さのコントラスト、透明度、硬さと柔らかさ、光沢があるかマットか、など
聴覚のサブモダリティ「○○を聴く」
例:音色の明るさと暗さ、音の形や波形、音の大小、強弱などのコントラスト、音の奥行きや凸凹、音程の高低差や届く距離、音色の色合いや鮮明さ、音の透明度、音色の硬さと柔らかさ、音質に光沢があるかマットか、音の重たさと軽さ、フレーズの長短、など
こうした細かなパラメーター設定は、もちろん嗅覚や味覚、触覚にもあります。でも実際には現時点ではまだ科学的に定義されていないだけで、他にもモーダルチャネルは沢山あります。たとえば歌手が好んで使う感覚には「呼吸感覚」や「筋感覚」、「時間感覚」「数理感覚」などがあります。
では、これらを一覧にして見てみましょう。
モーダルチャネル
科学的に定義されたもの
- 言語感覚
- 視覚
- 聴覚
- 嗅覚
- 味覚
- 触覚
現時点では科学的に定義されていないもの
- 筋感覚
- 呼吸感覚
- 時間感覚
- 数理感覚(数量の感覚、数理科学や天文学)
いま挙げた「科学的には定義されていないモーダルチャネル」にも細かなパラメーター設定があり、そうした感覚の全てが「センス」と呼ばれています。
体得と置き換え
こうした「サブモダリティ(モーダルチャネルの細かなパラメーター設定)」のチューニング作業は、実は多くの人が日々あたりまえにやっていることです。細かなチューニングを行い、それを自分の手足のように使いこなすことを「メソード演技」という演技手法の用語に習って「体得」と呼びます。
体得のほんの一例を挙げると、料理について勉強を始めた人が最初は味付けや調理時間がよく分からないために美味しくない料理を作ってしまうのに対し、徐々に「食材を捌く筋感覚」「微細な味を判断できる味覚」「適切な調理を行う時間感覚」「肉の焼ける音で火の通り具合を判断する聴覚」「食材の鮮度を判断する視覚や嗅覚」「調味料などの細かな分量を決める数字感覚」といった細かなパラメーターのチューニングが出来るようになっていきます。
こうしたモーダルチャネルの感覚が記憶に定着し、その感覚を反射的に思い出せる状態を「体得」といいます。
ではこれら細かなパラメーターのチューニングを体得したら、それでセンスは最大まで鍛えられたことになるのか?というと、実はまだ先のレベルがあります。
先程の料理の例には続きがあって、
料理センスが磨かれていくと「食材を捌く感覚(筋感覚)や、調理にかけた時間(時間感覚)、肉の焼ける音(聴覚)、食材の鮮度の判断(視覚や嗅覚)、調味料の分量(数字感覚)」といった個別の感覚は、
「これはきっと美味しくなる」とか「これはたぶん美味しくならない」といった味覚のモーダルチャネルへと置き換えられるようになります。
このように、
サブモダリティの細かなチューニングを体得し
体得した感覚を別の感覚に置き換え
感覚が無意識レベルで置き換えられることを
「シナスタジア(共感覚)」
といいます。
☆今日のトレーニング
今日は、体得と置き換えのトレーニングをひとつご紹介します。
体得と置き換えトレーニング
- 身の回りのもの(かばんやペットボトル、ペンやノートなど)をひとつ用意する
- 用意したものを「様々な角度で目で観る」「叩くなどして音を聴く」「匂いを鼻で嗅ぐ」「全体を指で触る」「(可能なら)口に入れて味見する」などして、五感で調べる
- 目をつぶって、五感の感覚を出来るだけ細かく全て思い出す(想像する)
- 目を開けて、想像とどれくらい誤差があったか確かめる
- 上記を5回繰り返す
- 五感を置き換える。
- 「観た時に、音を思い出す」
- 「音を出した時に、匂いを思い出す」
- 「嗅いだ時に、触った感じを思い出す」
- 「触った時に、味を思い出す」
- 「口に入れた時、見た目を思い出す」
※五感は自由に置き換えてOK
さて、今日はここまでです!
ぜひ参考になさってみて下さい。
最後まで読んで頂き、
ありがとうございました!𓆏