第7回「センスの鍛え方」
こんにちは、堀江真鯉男です。
今回のテーマは、第1回ブログで少し触れた
「センスの鍛え方」
についてです。センスはとても曖昧な存在で、捉え方がなく、多くの人を悩ませている要素でもあります。そして自分の中に眠っているセンスを引き出すには、どうしたらいいのでしょうか?
うーん。そもそも自分にはセンスがないしなあ…
いいえ、大丈夫です。センスは全ての人にあります。
そしてセンスというものは、年齢と共に磨かれたり、経験値によって成長したりするものです。
つまり、センスには
「アップデートする方法」
があるということになります。
しかしその方法を語る前に、
そもそもセンスって何なのか?
について、考えていきましょう。
センスというブラックボックス
「あいつは絵のセンスがあるよな」
「きみは文章のセンスがある!」
「あの人、歌のセンスあるよね〜」
といったように、ある特定のジャンルで才能を発揮する人に対して
「あの人はセンスがある!」
と言うことが多いのではないでしょうか。
センスのある人の周りには、人々の憧れの眼差しや、賞賛の声が集まってきます。
そんな一方で、センスのある人を見ると悲しくなる人もいます。中には妬んだり恨んだり、怒り出す人もいます。そうした人達の心の底に渦巻いているのは
「自分は、あの人に比べてセンスがない」
という劣等感や自己肯定感の低さ、セルフイメージの低さだと思います。
でも、センスというのは数値化出来るものでもないし、増してや「これがセンス!」と目に見えるものでもありません。それでも人は、こと芸術の分野においてはセンスについて語りたがります。
そもそもセンスとは、何なのでしょうか。
こうした議論をする中でよく上がる意見は
「センスは生まれ持ったもの」
とか、
「センスとは才能のこと」
という人がいます。
つまり、そうした主張の核になっているものは
センスとは不可侵の
後付け出来ない才能のこと
とした思い込みから来ているように感じます。
しかし冒頭に述べたように、そもそも全ての人間にセンスはあります。そしてセンスは年齢や経験値によってアップデートされるものです。
センスがアップデートされる?
何を言ってるんだ?そもそも何を持ってセンスと言うのかもわからないのに?
そんなのできるわけが無いだろ!
そうした声も多くあるかと思います。
では、センスがアップデートされるとはどういうことなのでしょうか。
センス=目に見えない配慮
人は経験値の量によって「物事の捉え方」が変わっていくことがあります。
身近な例で言えば、アルバイトを全くしたことがない人がファミレスに夕飯を食べに行った時、店員が不慣れで手際が悪かったり待たされたりすると
「ああもう、何やってるんだよ」
とイライラしてしまうのに対し、
ファミレスでアルバイトをした事がある人は
「ああ、夕飯時にたった1人でホールを回してるのか…誰か急病で休んだりして、代わりが見つからなかったのかもなあ」
など、置かれた状況の背後にあるものを察することが出来るようになります。そうした配慮の結果
「大変ですね、頑張って下さい」
など、思わず労いの声が出ることもあるのではないでしょうか。
このように「物事の捉え方」は経験値の量で変化し、接客業で言うならば、経験値が増えるごとに「気づき」「おもてなしの心」「労い」「承認」「ホスピタリティ」などの
「目に見えない配慮」
として表現出来るようになっていきます。
「目に見えない配慮」。
これは「声楽の世界」にも通ずるものがあります。
一緒に歌うとすごく歌いやすい人。
アンサンブルのバランス感覚が優れた人。
リーダーシップを発揮できる人。
発語や演奏リズムのタイミングが美しい人。
声に感情を乗せるのが上手い人。
こうした音楽的な「目に見えない配慮」のレベルが高い歌手は、共演者や観客に学びや気づき、感動をもたらしてくれます。そうした人に「センスがある」という評価をすることに、なんら違和感はないと思います。
言い換えるならば
「センスとは、目に見えない配慮のこと」
とも言えます。
こうした「目に見えない配慮」や「些細な気づき」は、
「子供の頃に何を経験したか?」
によっても変化します。
幼少期から培われてきた経験の塊をセンスと呼ぶ人もいますし、センスとは経験に基づく心のあり方だ、言う人もいます。
このような「人生経験に基づく物事の捉え方」を
「ビリーフ」
と呼びます。ビリーフとは、「信念」とか「観念」という意味です。
センスと脳科学
ビリーフ(観念、信念の意)は脳科学で規定された3つの領域の経験値によって生まれます。この領域のことを
- 「モーダルチャネル(五感)」
- 「情動記憶(過去体験)」
- 「メタ認知(自己評価)」
といいます。
そしてビリーフに従って物事をポジティブやネガティブに感じる領域を
「内部表現(ないぶひょうげん)」
といいます。内部表現は、一般的には「心」と呼ばれているものです。
「目に見えない配慮」=センス
と仮定した時、それは同時に
「ビリーフと内部表現」=センス
ということも出来ます。
つまりセンスのアップデート方法とは、
「ビリーフと内部表現」
のアップデート方法のことなのです。
もう少し具体的に言うならば、
センスのアップデート方法とは
「自己評価、過去体験、五感の感覚」
のアップデート方法のこと
だとも言えます。
冒頭で述べたように、センスに対してネガティブな印象を持つ人はたくさんいます。
その多くは
「自分にはセンスがない」
「あの人と比べて自分はダメだ」
という負の感情から生まれていることが多いかと思います。
確かにセンスには、幼少期の体験が少なからず影響しています。過去の音楽体験や美術体験を変えることは出来ません。
「なんだ。これまでの人生が関係あるなら、やっぱり音楽や美術のセンスは後付けじゃ鍛えられないじゃん」
と思う方もいるかもしれません。
しかし脳科学は僕達に
内部表現(心)と観念(自分の常識)はアップデートできる。
つまりセンス(感性)はアップデートが可能である。
という事実を教えてくれます。
そしてこれらが言わんとしていることは
大人になってからでも
音楽体験や美術体験は
幼少期の体験と同じレベルで鍛えられる
という素晴らしい事実です。
今回はセンスについて脳科学から見てみましたが、
ここで終わっては「結局どうすればいいの?」という不安で終わってしまいます。続きはまた後日別のブログで書きますので、そちらをまたご覧いただけたら嬉しいです。
☆今日のトレーニング
さて、センスの説明はまた別の機会に譲るとして、
ここでは「センスを鍛える方法」を1つだけご紹介します。
その方法は、
「ぼーっとしたままYouTubeを観る」
です。
極端な程に全身の力が抜けていると内部表現はアップデートされやすいので、音楽や言語学習などの能力を上げたい人やセンスを磨きたい人は、そうした動画を集中せずにぼーっと見るようにしてください。
残念ながら、今日はここまでです!
最後まで読んで頂き、ありがとうこざいました𓆏
第6回「プロ歌手の自己管理法」
こんにちは、堀江真鯉男です。
今日は、
「プロ歌手が必ずやっている自己管理」
についてお話します。
ますプロと呼ばれる人の定義ですが、ここでは
- 自らのプロフェッショナルな領域において自己学習、自己研鑽を積み続け、
- 自らのプロフェッショナルな領域においてサービス・物の提供をして、
- その対価として「お金や情報、サービス・物など」を受け取る人
をプロとします。(逆にこれが出来ていない人はプロじゃないとは思いますが)。
今回はその中でも、歌手活動などの音楽活動によって報酬を得ている「プロ歌手」が必ずやっている3つのことを取り上げます。
これはプロ歌手を目指す人のみならず、
声の悩みを持つあらゆる人に役立つ大切な考え方
になります。
プロ歌手が必ずやっている自己管理。
それは、
この3つの自己管理です。
ボイスマネジメントのすすめ
「自己管理なんて、また当たり前なことを言い出したな…それがなんだっていうんだ?」
そう思う人もいるかもしれません。
しかし「発声」について真剣に考える上で、この3つの自己管理は欠かすことが出来ない大切な項目です。
これは多くの人が抱える潜在的な問題ですが、「ボイストレーナー、ボイストレーニング」という言葉から想起されるものが、どうしても「鍛える」方向にむかってしまいがちです。そうすると、
「声の悩みを改善する=声を鍛える」
という図式を強烈に信奉する人が出てきてしまいます。例えば、声の使いすぎが原因で発声が崩れている人には「ボイスケア」が必要なのに、「発声が変なのはボイストレーニングが足りないんだ!」と信じてトレーニングを続けると、より発声を悪化させてしまう事態になりかねません。ボイストレーニングそのものは、決して万能ではありません。
そもそも発声とは
この3要素を管理すること
を指します。
そして、こうした発声の3要素を管理することを、
「ボイスマネジメント(声の管理)」
と呼ぶことにします。
ただこの名称は、僕が声の管理方法を総括して呼ぶためにそう定義付けているだけで、一般的に世の中に流布している名称ではありません。悪しからず。
「難しすぎてよくわからない。
カンタンに言うと、どういうこと?」
確かにこのままだとよく分からないですよね。
カンタンに言ってしまえば、
「声の悩みを改善するためには
ボイストレーニングだけじゃダメで、
たまには温泉や整体、エステなどに行って
体を労わったり、
人前で話したり歌う時には
息をゆっくり吸ったり、力強く吐いたり、
そうやって自分の声をサポートしてあげることが
声の悩みを改善する近道」
ということです。
このボイスマネジメント(声の管理)について考える時、これまでのブログで書いてきた、
「声の状態は、呼吸と身体の状態を表している」
という考え方を応用します。
つまり、
プロ歌手が必ず行っている
ボイスマネジメント(声の管理)とは、
- 「声と呼吸、身体の鍛え方」
- 「声と呼吸、身体の癒し方」
- 「声と呼吸、身体の使い方」
この3要素を徹底して管理することで、プロ歌手としての活動を自ら支え、歌手生命を長くすることを言います。
例えばこれをRPGなどのゲームに置き換えると、
「強化魔法」
「回復魔法」
「攻撃魔法」
のような、3系統の魔法のイメージです。
ドラゴンクエストやファイナルファンタジーといったゲーム(RPG)が好きな人には共感して頂けると思いますが、長い冒険の中で「強化/回復/攻撃」のどれかがレベル不足だと、ゲーム終盤のボス戦、あるいはフィールドエンカウントでパーティーが幾度も全滅してしまい、レベル上げや装備集めに時間をかけなければ先に進めない、という面倒な事態が待っています。(ゲームが好きな人にしか伝わらない例えですね…!)
プロの歌手はこうした3系統の管理によって、
歌唱スキルを強化したり、
風邪や歌いすぎ等のダメージからの回復を早めたり、
コンサートや演奏会本番での成功率を上げるために自分自身と戦う、
ということを行っています。
その具体的な管理方法については、またいずれご紹介させて頂きます。
今日はここまで!
また明日のブログも発声のことを書くので、
もし良ければ参考になさって下さい。
次回もお楽しみに!
第5回「身体が発声を良くする?」
こんにちは、声楽家の堀江真鯉男です。
このブログでは「声の悩みを解決する方法」について綴っていこうと思います。もしよければ、参考になさって下さい。
今日は、
「発声は、身体の使い方を意識すると良くなる」
というお話をさせて頂きます。
身体に意識を置くとは?
まずボイストレーニングという言葉を定義する時、
「声の悩みを持つ人がまず具体的な問題点を見つけ、解決の糸口を探し、手に入れた情報を元に意識付けや反復練習といったトレーニングによって、自らの力で課題を克服すること」
という意味だとします。
そして「声の状態=呼吸、身体の状態」ですので(前回、前々回のブログを参照)、
「声の改善=呼吸と身体の改善」
ということになります。
呼吸を改善するためには、
「息の吸い方、息の止め方、息の吐き方」
に、どのような問題が起こっているかを探すことが大切です。
そして身体を改善するためには、
「身体の7つのポイント」
に意識を置くことが、鍵となります。
この7つのポイントは、サンスクリット語で
「チャクラ(車輪の意)」
と呼ばれています。
身体の7つのポイント
チャクラという言葉は、近年の漫画やアニメでもよく耳にするようになりました。なのでみなさんも、どこかで聞いたことがあるかもしれません。代表的なものをひとつ上げると、NARUTO疾風伝の作中に登場するキャラクターたちが忍術に使うエネルギーもチャクラと言う名前ですね。
実は、現在アジアと呼ばれている地区は、紀元前には声と呼吸、身体の繋がりについての研究が盛んに行われていました。現代のように医学が発達していなかった紀元前の時代では、身体の状態と呼吸の状態、そこに声の状態を照らし合わせて、健康管理や予防、診療を行っていたのです。
その「声を使った健康法」の中で、とりわけ重要視されていたものが「チャクラ」と呼ばれる身体のツボのようなものです。
チャクラは、現代的な解釈では7つあると言われていますが、地域や時代、団体によって、5つとする説、6つとする説などがあり、
中には720(!)あるとする説もあります。
今日はその中でも最も有名な「7つのチャクラ説」をご紹介します。
発声やボイストレーニングにおいて重要視されている場所は、
①ムーラダーラ/尾てい骨(おしりの穴のあたり)
②スワディシュターナ/臍下丹田:せいかたんでん
③マニプーラ/腰(背中の下側)
④アナーハタ/胸
⑤ヴィシュッダ/首(のど)
⑥アージュニャー/眉間
⑦サハスラーラ/頭の上
この7つのチャクラです。
声を改善したい時は、呼吸と身体を改善することが大切であり、
身体を改善するときは、7つのポイントを改善することが大切になります。
もう少し分かりやすく言うと、
①股関節まわり
②おへそまわり
③腰まわり(背中の下側)
④胸まわり
⑤首まわり
⑥目のまわり(表情筋)
⑦頭皮
「この7箇所のストレッチや筋力トレーニング、ケアを行うことで、発声が改善される」
ということになります。
歌ってても声が上ずる。正しい音程が取れない。
セリフを喋ろうとしても、声が歪んだり引っかかったりして上手く出ない…
こうした声のトラブルの原因は、
まず確実に、呼吸と身体のトラブルによって引き起こされています。
身体のどこに余計な力が入っているのか?
身体のどこの筋力が足りないのか?
こうした問題をピンポイントで見つけるには時間も労力もかかるし、整体やマッサージに通うにもコストがかかりすぎます。しかし最初からトレーニングやケアすべき場所を「7箇所」に絞ることで、余計な時間やコストがかからずに済むわけです。
では、具体的にどんなトレーニングやケアをしたらいいのでしょう。
実は、7つのチャクラのトレーニングには様々な方法論や思想があり、その全てを列挙することは不可能なほどに膨大な量で、緻密で、忍耐を必要とするものばかりです。しかも中には僕達がぎょっとしてしまうような非現実的な方法論や思想もあったりするので、その全てがボイストレーニングに向いているものばかりとは言えません。
ここまで読んでいると、だんだんこんな気分になってきませんか?
「そんなに面倒な方法ならやりたくない!」
少なくとも僕ならそう思います。
ですのでこのブログでは、できるだけ噛み砕いて、カンタンな方法をお伝えします。
まず具体的なケアの方法をひとつ書くと、
「声を出す前に、身体の7箇所をほぐす」
これだけです。
これを習慣化して頂ければ、それだけで効果があります。
「え?たったそれだけ?」
そう、たったそれだけです。
高音域の声の支え方、声量を出すための力の込め方といった「身体の使用方法」よりも大切なのは、「身体の手入れの方法」です。「身体の手入れの方法」を覚えてしまう方が、この先に発声が崩れた時にも、発声を整えるためにも改善のために役立ちます。
ほぐす場所は、
①股関節まわり
②おへそまわり
③腰まわり(背中の下側)
④胸まわり
⑤首まわり
⑥目のまわり(表情筋)
⑦頭皮
この7箇所です。
まずはこれまでに小学校、中学校、高校の授業などで習ったストレッチや体操の知識、指圧のやり方などを使って、ほぐしてみて下さい。
確実に効果があります。
今日はここまでです!僕のオススメのほぐし方は、後日またお伝えします。お楽しみに!
第4回「呼吸が発声を良くする?」
こんにちは、堀江真鯉男です。
前回のブログでは、
「声を良くするためには、呼吸と身体に注意を払う」
というお話をさせて頂きました。
しかしそこで話が終わってしまうと
「なるほど!でも具体的にどうすればいいの?!」
という意見が出てくると思います。
そこで今回は、
「声と呼吸、身体」の繋がりを感じるための、具体的なトレーニング方法をひとつご紹介します。
母音の練習
「声と呼吸、身体」のトレーニングには様々な方法がありますが、まずは基礎の基礎からお伝えします。
基礎の基礎。それは、
「母音の練習をする」
これが、最も大切な練習のひとつになります。
しかし「母音の発音が大切」と言われてしまうと、ガッカリしてしまう方も多いのではないでしょうか。というのも「母音の発音を練習したほうがいいよ」なんて、発声のトレーニングをやったことがある人からしたら、耳にタコが出来るほど聞かされていることだからです。
「あいうえお」を、
しっかり口を動かして発音する!
腹式呼吸を使う!
ハキハキしゃべる!
そうした滑舌のトレーニングは、確かにある程度の効果はあるはずです。しかしこれは「人前でパフォーマンスをする」人には役立っても、「日常的な自分の声を改善したい」という人の役にはあまり立ちません。なぜならば、声を変えるために普段から口をハッキリ動かせ!というのはその場その場での対処療法のようなもので、その人の根本的な原因に対するアプローチが出来ていないからです。
もちろん演劇などの舞台表現では滑舌のコントロールは重要ですが、日常的な会話に使ってしまうと、どうしても不自然さが生まれてしまいます。
では、
「声の悩みを持つ全ての人」
に効果のある母音の練習とは、一体どのようなものでしょう。
そのヒントは、
「息を吸う時」「息を止める時」「息を吐く時」
にあります。
呼吸ごとに母音を変える
声のコントロールに必要なものは、
呼吸と身体の感覚です。
そして呼吸の状態には、
「息を吸う、息を止める、息を吐く」
の3つがあります。
多くの人は声を出す時、
「息を吸う、息を止める、息を吐く」
の「息を吐く」時しか母音を意識しないものです。
呼吸のあらゆる面に意識を置かないまま練習を続けてしまうと、
息を吸う時に、喉に力が入りすぎている
息を止める(支える)ための力が無さすぎる
息を吐くための、喉や口が狭い
といった問題が起こっていてもなかなか気づくことが出来ず、結果的に呼吸が原因で発声が崩れてしまいます。最悪の場合はそれが癖になってしまい、改善が困難になってしまうこともあります。
でも「息を吸う、息を止める、息を吐く」に意識を向けて練習をする人は、自分に起こっている呼吸の問題を早期に発見できるようになります。
そして呼吸の気づきの助けとなるものが、
「息を吸う、息を止める、息を吐く」
このそれぞれで母音を変える
という練習です。
これはほんの一例ですが、
「吸う」時に「O/オー」の口で吸う
「止める」時に「A/アッ」と喉の奥で息を止める
「吐く」時に「U/ウー(実際はオに近い)」で吐く
こうした呼吸と母音を連携させる練習を習慣化することで、
加齢による声の出づらさ、
発声や音程の不安定さ、
力任せな発声による声の歪みや荒れ、
といった問題を早期に改善することができます。
「吸う、止める、声を出す」
「息を吸う、息を止める、息を吐く」に対する意識の改善によって、次第に深い呼吸が出来るようになっていきます。
次は、「息を吐く」部分を「声を出す」に置き換えて行きます。
深い呼吸から生み出された声は、これまで自分が出したどの声よりも深く、柔らかく、音域のコントロールも楽になっているはずです。
声の出し方ですが、
はじめは「息を吸う(オー)、息を止める(アッ)、息を吐く(ウー)」の呼吸と同様に
「息を吸う(オー)、息を止める(アッ)、声を出す(ウー)」
で行うのがカンタンでいいと思います。
ウの母音のまま音階練習をしたり、
ウの母音の直後に滑舌練習をしたりすると、
余計な力やエネルギーを使わずにトレーニングが出来て効果的です。
ぜひ、参考にしてみて下さい。
このブログでは、「声の悩みを解決する方法」について綴っていこうと思います。もしよければ、参考になさって下さい。
次回の記事もお楽しみに!
第3回「いい発声の共通点」
こんばんは、堀江真鯉男です。
前回は
「上手くなる近道は、
たくさんGoogle検索をすること」
というお話をさせて頂きました。
今日はその続き、
「どうすればインターネットの情報から、正しい体感を得ることが出来るのか?」
について話します。
一体どのようにすればいいのでしょう?
正しく体感を得る方法とは?
そもそも体の感覚はみんな違うものですし、
誰もが等しく同じ体感を得られる、なんてメソッドは存在していません。
声の悩みは人それぞれ違いますし、個別の問題には個別のアプローチ、個別の解決策が必要に思えてきます。
そうした各々の悩みに包括的に応えられるトレーニングは、現状存在していないのではないか?そんな気さえしてきます。
「なあんだ、じゃあ正しい体感を得る方法なんてないんじゃないか」
そんな声が聞こえてきそうです。
これはインターネットに限ったことではありませんが、「誰もが正しい体感を得られるメソッド」は現状、存在していません。
「この通りに練習すれば上手くなれる!」
と謳っているトレーニング方法や書籍はたくさんありますが、実際にそうした方法で正しい体感を得られるかと言うと、かなり無理があると思います。
確かに、メソッドや方法論では正しい体感を得ることは難しいと思います。
しかし、
特定のメソッドやトレーニングとは別に、
「正しい体感を得る方法」
は存在しています。
なんだか、とんちのようです。
それは一体どのような方法なのでしょうか?
古今東西の良い発声の共通点
世界には、実に様々な発声が存在しています。
たとえばクラシックの伝統的な発声には、オペラを歌うために19世紀に考案されたベルカント唱法や、バロック時代まで主流だった教会音楽を歌うためのブオンカント唱法などがあります。
ポップスで言えばマイケル・ジャクソンのボイストレーナーだったセス・リッグスの考案したスピーチ・レベル・シンギング発声(SLS発声)が有名です。
他にもインド声楽や仏教、バラモン教、ヒンドゥー教に代表されるマントラ、ブルガリア地方の民族音楽であるブルガリアンボイス、モンゴルのホーミー、アフリカピグミー族の歌など、発声は奥が深く、研究のネタが尽きることは無さそうです。
そうした古今東西の発声は一見、ばらばらの技術のように見えます。
しかし、それら古今東西の発声を様々な角度から多角的に見ていった時、
全ての発声には一定の共通点が存在していることが次第にわかってきました。
どのような共通点かというと、
「どのような発声においても、
声と呼吸、身体は必ず連動する」
という、一見当たり前の共通点です。
しかしこれは、どのようなジャンルの声の使い方でも変わらない、普遍的な事実でもあります。
この普遍的な事実をもっと具体性に言うならば、
声の状態=呼吸と身体の状態であり、
呼吸の状態=身体と声の状態であり、
身体の状態=声と呼吸の状態である。
と言い換えることもできます。
発声の改善=認知の改善
どのような人にも等しく効果があり、
必ず正しい体感を得られる方法。
それは、
「自分の声に起こっている問題は、
呼吸と身体に起こっている問題でもある」
と知覚し、認識しながら、発声トレーニングを行うことです。
発声のトレーニングで多くの人に起こる失敗は
「声色の変化にすごく集中しているのに、ぜんぜん上手くなれない」
など、声に集中しすぎてしまう問題です。上手く行かない時は多くの場合、呼吸と身体に集中力が働いていないことが原因のようです。
自分の発声を、呼吸の観点から、そして身体の観点から観察することが出来れば、必ず発声は自分が理想とする状態に近づきます。
このような視点でトレーニングを続けていくと、
例えば歌手は練習の中で
「高い声を出そうとすると苦しくなるなあ。なんでだろう.......あ、そうか!高い声を出す時に身体がちぢこまって、息も止まってしまったからダメだったんだな。じゃあ高い声を出す時は、背伸びするつもりで身体を伸ばしながら息を吐いてみよう」
そんなふうに気づくことが増えてきます。
あるいは役者であれば、セリフを喋る時に
「声に迫力がなかったな。ただ騒がしいだけで、説得力がない。あー、もしかしたら、大きい声を出そうと身体に力が入りすぎか?息も浅かった気がする。身体を広げて呼吸を深くして、もう1回やってみるかな」
など、自分の問題点を探しやすくなります。
このように自分の声に起こっている問題と、呼吸、身体の状態を紐付けて考える事が出来るようになれば、あとは徐々に成果がついてくるものです。
さあ、そろそろ今日のまとめを言います。
インターネットから、正しい体感を得る方法。
まず大前提として、
正しい体感とは、他人に強要されるものではありません。
そもそも他人の言う「正しい価値観」が、自分にとっての価値観と同じでなければいけない理屈なんてありません。そんなものがもし存在しているならば、それはただの屁理屈です。
正しい体感を得て、
必ず発声が良くなる方法。
それは、
いつも「声と呼吸、身体」を連動して考え、
成功したときは「声と呼吸、身体」が連動していたのだと気づき、
失敗したときは「声と呼吸、身体」が連動していなかったと気づくこと。
この「気づき」を得ることこそが、
あなたにとっての正しい体感を得る、
唯一の方法であり、
必ず発声が良くなる方法です。
Google検索やSNSなど、インターネットで手に入れた具体性な情報は全て「声と呼吸、身体」とセットで考えることで、気づき、体感を得ることができて、結果的に発声は必ず良くなります。
もちろんこれは、インターネットに限ったことではありません。
書籍、授業、レッスンなどのあらゆる場所で得た情報は、「声と呼吸、身体」と関連付けながら「気づきを得る」ことで、最短で上手くなることが出来るようになります。
是非、参考にしてみて下さい。
さて、今日はここまで!
「具体性にどんな練習をすればいいのか?」については、後日お話させて頂きます。
このブログでは、「声の悩みを解決する方法」について綴っていこうと思います。もしよければ、参考になさって下さい。
次回の記事もお楽しみに!
第2回「知らない事を見つける?」
こんにちは、堀江真鯉男です。
今日お話することは、少し衝撃的な内容かもしれません。
ズバリ!それは、
「ボイストレーニングって行かなくても上手くなれるよ!」
という事です。
世のボイストレーナーを敵に回しかねない気もしますが、これは事実です。
しかしどうすれば、ボイストレーニングに行かずに上手くなれるのでしょうか。
知らない事を知るツール
僕達は、進化し続ける情報社会の中に生きています。このとても恵まれた環境では、自分次第で、どのような学習をすることも可能です。
そしてその情報社会を支えているものは、
インターネットです。
「今更そんなあたりまえなことがなんだって言うんだ?」
そんな声が聞こえて来そうです。
そう、この誰もが当たり前に使っているインターネット。今日インターネット上にはGoogleやアプリ、SNSやYouTubeなど様々なコンテンツやサービスが溢れていて、時間を潰したり趣味を広げたりと、便利だし手放せないものになっていますよね。
ですが、
果たしてどれだけの人が、
自分の学習のために上手く活用できているでしょうか?
Googleに代表される検索機能、
便利なアプリケーション、
SNSなど情報発信の場、
これらを活用して「自分の知りたいもの」を上手く手に入れることによって、自分の学習効率を飛躍的に高めることが出来ます。
この時、ひとつ重要な問題点があります。
その問題点とは、
「自分は何を知らないのか?」を把握していなければ、インターネットからは、すでに知っている情報しか引き出せないという点です。
たとえばGoogleで検索するにしても「発声」とか「ボイストレーニング」「歌が上手くなる方法」といった程度のワードで検索しても、もうすでに知っている知識や、発声の先生やボイストレーニング教室の情報くらいしか手に入れることが出来ません。
しかしそうした検索をしていく中で、具体的なワードに何度か出会うはずです。たとえば「ん?チェストボイスってなんだろ?」「ファルセット?へー、発声に必要みたいだけど、どうやるんだろ」など自分の知らない知識に出会った時、そこで初めて検索ワードが「発声 基礎」「チェストボイス やり方」「ファルセット 練習」など、具体化するようになります。
だんだん分かってきましたか?
インターネット上にあるコンテンツやサービスを、学習に使う方法。
それは、
「抽象的な検索をしながら、知らない知識に出会ったら、具体的な検索をする」
ことに尽きると思います。
こうした「自分の知らない知識」のことを
「スコトーマ(心理的盲点)」
といいます。つまり、
発声の改善とは、
スコトーマを無くす作業
のことでもあるのです。
ネットでは体感を得られない?
あいまいな検索をする中で
スコトーマ(心理的盲点)に出会ったら、
そのワードの検索をする。
その作業を繰り返すことで、これまで知っていたつもりで意外と分かっていなかったボイストレーニングの知識について、徐々に理解を深めていきます。そして知識を増やしていく作業の中では、
ボイストレーニングの具体的な実践方法もたくさん知るようになるはずです。
しかし難しいのは、
「自分のやり方は、本当にあっているのか?」
そうした疑問に対する解答が、インターネット上には無い、という点です。
知識は学べば身につきますが、
身体的な感覚は、インターネットからは得ることが出来ない。
なのでやはり、ボイストレーニングに通わなければならない。
…と、普通だったら言うでしょう。
確かにこうした身体的なコントロールや音感を使ったトレーニングは、自分では正しい判断が出来ないような気がします。
ですが、文字や動画の情報でも、
確実に正しく効果を得られる方法があります。
その方法は…
すみません、残念ながら、今日ブログに費やせる時間はここまでのようです笑
続きは、次回またお話させて頂きます。
このブログでは、「声の悩みを解決する方法」について綴っていこうと思います。もしよければ、参考になさって下さい。
次回の記事もお楽しみに!
第1回「声に悩む、全ての人へ」
はじめまして、堀江真鯉男です。
僕はこれまでにカウンターテナーとテノールによる歌手活動を行いながら、様々な声の悩みを持った人達のボイストレーニングを行ってきました。
レッスンを受けに来る人の中には、音声障害の方、トランスジェンダーの方、声を若返らせたい方、カウンターテナー志望の方、大道芸人、性別の違う声で歌ったり喋ってみたい方(そうした人を両声類といいます)など、様々な人がいます。
そうして彼ら、彼女たちとレッスンを通して向き合っていく中で、
「現代的なボイストレーニングには限界がある」
そう感じるようになりました。
ボイストレーニングの役割
そもそもボイストレーニングや発声指導というのは、歌手や役者、声優、アナウンサーなどの「仕事で声をメインに使う人、またはそうした職業を目指す人」に向けて発展してきた指導技術であり、もともとは職業訓練のための技術です。
これは当たり前のことなのですが、自分の声に違和感を覚えて「声を変えたい」と悩んでいる人と「職業訓練のために声を鍛えたい」と意気込んでいる人には、必要なトレーニングが違うはずです。
それにも関わらず、ボイストレーナーが「声を変えたい」と悩んでいる人に職業訓練のスキルで指導をしたら、どうなるでしょうか。
例えばボイストレーナーの請け負う仕事には「高い音を出す」とか「リズムや音程を正確に取れるようにする」「表現力を増やす」といった技術的問題の解決があります。
しかし声の悩みを持つ人の依頼内容には「トランスジェンダーなのですが、声の性別を変えて欲しい」とか、「病気は治っているんだけど声が出ない、助けて欲しい」といった、発声の問題と精神的側面を同時に解決したいというケースが数多くあります。
こうした声の悩みを持つ人に、
音程やリズム、正しいフォームの習得といった職業訓練が必要でしょうか?
現代的なボイストレーニングメソッドに責任があるとはいいません。事実、そうしたメソッドをうまく応用して「ある程度」まで依頼者の能力を引き上げることのできるトレーナーも多数いるでしょう。
しかし現代的なボイストレーニングでは、問題の根本的な解決に至ることは少ないと思います。根本的な解決、つまり「原因療法」をせずに、目に見える問題を即時的に解決しようとする「対処療法」によるレッスンが、とても多いように感じます。
たしかに対処療法的な指導でも、その瞬間は良くなります。しかし根本的な解決に向かってアプローチしなければ、数日たつと訓練を受ける前の状態まで戻ってしまいます。
そして、こんな声が沢山聞こえるようになります。
「ボイストレーニングに通ってるのに、ぜんぜん満足できない!上手くならない!」
世の中には、そんな人がザラにいるのです。
歌の感性を引き出す方法?
「そんな馬鹿な!じゃあ、ボイストレーニングに通う意味はないっていうのか!」とか、「うちの生徒はちゃんと上手くなっている!」といったお叱りの声が聞こえてきそうですが、そうではありません。
声が変わる、あるいは歌が上手くなるプロセスには、ある条件が存在しているのです。これまでのボイストレーニングの世界では、その条件を「感性(センス)」と呼んでいました。「感性」のある人は上手くなるし、「感性」がなければ上手くならないという理屈です。
「感性」という曖昧なものを信奉する人の中には、困った事を言い出す人がいます。
「感性がないというのは、才能がないということだ!」
そんな考えを持つ人がいるのです。
ボイストレーナーが依頼者に「才能がない」などと言うのは論外ですが、指導する側が「この人には感性がないな」などと思ってしまうと、態度が投げやりになったり、レッスンへの真剣味が失われてしまい、その態度を見た依頼者自身が「自分には才能がないのかな...」と自己評価を下げてしまうケースもあります。
しかし、感性のない人などこの世にいません。
そもそも感性とは「モーダルチャネル(五感の入出力)×情動記憶(過去の記憶)×観念(自分の中の常識)」のことなので、感性は全ての人間が持っているはずです。
つまり、
上手くならない人は感性がないのではなく、
感性の引き出し方を知らないだけです。
そして感性を引き出すことが声の悩みを解決させる鍵なのだとすれば、
「ボイストレーニング×感性を引き出す方法」
これこそが、あらゆるタイプの声の悩みを解決する発声トレーニングなのではないでしょうか。
ボイストレーニングに行こうかなと思っている人。
すでにボイストレーニングに通っている人。
声を変えたいけど、どうしたらいいのか途方に暮れている人。
僕がこれまでに発声の研究をライフワークとして、様々なジャンルから得た知識の掛け算が、きっとみなさんの役に立つと思います。
このブログでは、「声の悩みを解決する方法」について綴っていこうと思います。もしよければ、参考になさって下さい。
次回の記事もお楽しみに!